ジキルハイド症候群



「ヒッ」


声をあげて怯える亜理砂に、流石に可哀想に思ったのか廉が呼ぶ。


「亜理砂」


かむかむと手招きに亜理砂は、ホッとしながらまるで泥棒のように抜き足差し足で廉の元に逃げた。


「馬鹿だな」

「だ、だってぇ―」


涙を浮かべながら、横から廉に抱きつき、廉は優しく頭を撫でてやっている。


「…………」


あたしは、その姿を見て開いた口が塞がらなかった。
廉が、あんなに穏やかな優しい表情している姿を初めて見た。
いつも無表情で呆れるか怒ってるかなのに………。


「廉、珍しいな」


ふぁあっと欠伸混じりに蒼真が言う。
あたしは、蒼真を見上げる。


「やっぱり珍しいわよね?」

「あぁ………廉なんか見るなよ」

「……は?」

「見すぎ」


んな見るなら俺を見ろ、と言う蒼真の胸を軽く叩けばニヤリと笑う。


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