ジキルハイド症候群
一応、貴重品だけを持って、教室を出ようとしたあたしだったけれど、名前を呼ばれて足を止める。
「海江田さん」
「……」
肩越しに振り返れば、何時だったか話しかけてきた女達。
化粧の濃さに若干引く。
「なに……?」
「あたしらさ、ちょっと話があるんだ」
ニッコリと笑みが向けられる。
その笑みは自然な笑みではなくて、作り物の笑顔。
出来ればお近づきにもなりたくない部類のものだ。
「話?」
「そ。ついてきてくんない?」
「ここじゃできないの?」
「ちょーと、深刻なわけ」
女達は、あたしについてくるように顎で教室の外を指すと、先に出ていく。
こういう誘いは乗りたくないけど、待ってるわよね。
あたしは、小さくため息をついてから彼女らを追いかけた。