ジキルハイド症候群
哀れな計画



―――――――――
―――――


「ただいま……ぅ」


呼吸をする度に腹部に激痛が走る。


(痛いわ……)


空手の有段者だから当然ね。
気を抜いたらまた倒れそうだ。


「おかえり、恵里………どうしたの?!」


リビングからひょこっと顔を出したお母さんはあたしを見るなり血相変えて駆け寄ってくる。


しまった……お母さんには誤魔化しきかないじゃない。


「何でもないよ」

「嘘言わないの」

「本当に……」

「………いらっしゃい」


いつものお母さんの声じゃない。
看護師の顔になったお母さんにあたしはこっそりため息をついた。


(蒼真には、バレなかったわよね?)


気付かれないように気を配ったつもりだけど、少し心配だ。
どうかしたのか、と聞かれた時も笑って答えたと思う。


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