ジキルハイド症候群



「あ、ちょっと!!」


バサバサバサ……。
茉里の鞄をひっくり返し、中のものを全部出してからバッチを探す。
一冊一冊の本の間、筆箱の中隅々まで探しても見つからない。


「あったぁ?」

「…………っ」

「ないでしょ?」


この勝ち誇った笑みが憎い。
あたしのバッチを使って何をしようと言うの。


「………バッチを何に使うのよ」

「何に使うと思う?」


顔が同じだから悪いことをしてもどちらかわからない。だから、バッチは身分証明になる。


厄介な事に使われたら大変な事になる。


「でも、ここにないから取り返せないね~」


あたしは、立ち上がり、再び手を振り上げる。


「なにもしてないのに殴るの?」

「っ」


冷え冷えとした表情にあたしの手は止まってしまった。


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