ジキルハイド症候群



一瞬、心臓が止まるかと思った。


「ま、て…「分かったー」


あたしが止める間もなく、茉里が階段を上っていく音が聞こえてくる。


ちょっと待って、あたしの携帯を茉里が触るなんて、何するか分からない。


茉里を追いかけようと足に力を入れようとするが、お母さんに止められる。


「座ってなさい」

「で、も」

「茉里が持ってきてくれるから」


それが不安で仕方ない。
暫くすると、階段の音が再びして、茉里が姿を表す。


「持ってきたよ」

「ありがとう」


お母さんが受け取り、あたしに渡す。
あたしは直ぐに携帯を開く。
そんなあたしを地獄に突き落とすように茉里が口を開いた。


「あ、連絡してあげたよ」

「……え、」

「陵南さんに」


勝手に、触ったの。


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