ジキルハイド症候群



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病院に行ったあたしは、暫く安静にしておくようにと言われた。
お母さんには細やかに説明しているようだったけれど、如何せん医療用語は全くわからなかった。


「いい?寝ておくのよ?」


毛布をかけなおされて、額に張り付いた前髪をお母さんが払ってくれる。


「お母さんは?」

「買い物に行ってくるわ」


病人食の材料がないの。


あたし、病人って程じゃないと思うのだけど。


「何か食べたいものは?」


出掛ける準備をするお母さんにあたしは、頭の中にふとウサギの林檎が浮かんだ。


「……林檎、食べたい」

「林檎?」

「ウサギ……」

「わかったわ」


クスクスとお母さんは笑うとあたしの頭を一撫でして買い物に出掛けていった。


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