ジキルハイド症候群



茉里の計画を聞いてもあたしは不思議と茉里に対して怒りが無くなった。
代わりに酷く哀れに思った。


「―――それで、蒼真が手に入ると?」

『当たり前』

「あたしに成り済まして?」


それで、仮に蒼真が、茉里を抱いたとして、本当に茉里のものになる?


『……何が言いたいの』


初めて、茉里の声色が変わった。
あたしは、小さく笑う。


「可哀想に」

『………なんですって?』

「あんたのそれは、蒼真の身体は手に入れても、心は手に入らない」


蒼真をもの扱いしている時点で駄目。
それに、蒼真を知らないからそんな計画を立てることが出来る。


「蒼真は、簡単には騙せないわ」


心が静けさを取り戻していく。


『ハッ何?あんたなら蒼真が分かってるって?』


反対に、茉里の心が乱れ始めた。


< 207 / 260 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop