ジキルハイド症候群



蒼真の全てが分かる訳じゃない。
あたし自身信じきれていないのもあった。その結果がこの状況なのかもしれない。
蒼真を頼っていたらもしかしたらこんな事態にはならなかったかもしれない。


『恵里なら、すぐ分かる』


「………蒼真は、あたしだけを見てくれてるから」

『何それ?自信満々じゃん』

「……自信なんてないわ」


ただあたしは、蒼真を信じる。


『っ――――煩いっ』


キィンと耳の中に響き三半規管を揺らされる。


『煩いっ分かんないじゃない!やってみなきゃ!』

「茉里、」

『あたしの名前を呼ばないで!!』


凄い剣幕で茉里は叫ぶ。
はぁはぁ、と荒い息遣いのまま、茉里は嘲笑した。


『っとにかく、あたしは手に入れるから』
「ちょ、」


一方的に電話は切られてしまった。


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