ジキルハイド症候群



突然携帯が鳴り出した。
見ると知らない番号からの着信だった。
しかも、その番号に見覚えがあった。


恵里ではないだろうと無視しようとしたが、見覚えがある番号だったので取りあえず出ることにした。


「………はい」

『もしもし……蒼馬?』

「……恵里?」


心が震えた。
元気のない声で俺の名前を呼ぶのは、紛れもなく恵里の声―――だと思った。


『うん、蒼真今どこにいるの?』

「何時もの場所……お前、大丈夫なのか?」

『何とか、でもね辛くて今保健室にいる』

「保健室?学校来たのか?」

『うん』


心が震えたのは一瞬だけ。
すぐにこれは恵里ではないことに気付いた。
この声は、あの女の声だ。


何故番号を知っているのか、恵里の真似をしているのか。


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