ジキルハイド症候群
教科書に目を戻す。
暫くあたしを睨み付けていた茉里だったけれど、反応しないあたしに舌打ちをして荒々しく部屋から出ていった。
チラッと茉里が出ていった跡を見た後、あたしはゆっくりと教科書に集中する。
あんな性格の子が男はいいのだろうか。
きっと男の前では自分を偽っているだろうな。
(………もう、男なんて信じない)
好き、付き合って、と言われてもしかしたら茉里じゃなくあたしを見てくれるかも、そう思っても皆、結局は茉里の方に行ってしまう。
誰も、あたしを見てはくれない。
海江田 恵里、茉里。
名前が違うだけで外見は全く同じなあたし達。
皆、皆茉里ばっかりだ。
『………はぁ、』
あたしは、一つため息をつくと、思考を振り払うように頭を振って、勉強に集中した。
これが、あたしの日常。