ジキルハイド症候群
あたしは、寝ている蒼真を見下ろす。
あたしと茉里を見分けられるの?
遠くでも?近くでも?
皆、間違うのに?
「本気なんだよ。分かってあげてよ」
優しい声がすっとあたしの中に入ってきた。
(本気、か………)
あたしは、那祁の言葉を聞いても、やっぱり心の中では疑っている。
(あぁ、あたし人信じれないんだな)
今までの経験が勝っている。
那祁の言った事はきっと本当なのだろう。だとしたら、あたしはこの人にとても悪いことをしているんだろう。
「少しずつでいいよ」
「え?」
「少しずつ、蒼真を信じていけばいい」
時間は沢山あるんだから。
「でも、」
「離れる、とか考えたらダメだよ?」
蒼真の奴、きっと地の果てまで追いかけるよ。