ジキルハイド症候群
那祁の言葉が嘘に聞こえないのが不思議だ。
「ま、俺達は恵里ちゃんから離れないから」
安心して、と那祁は言う。
寝ている蒼真は起きる気配がない。
二人を交互に見ながら、あたしは考えてみた。
(少しだけ、一緒に居よう)
もし、それでやっぱり駄目だったら離れればいい。
これで、本当に最後にしよう。
「………分かったわ」
「うん。蒼真を宜しくね」
自分のことのように喜ぶ那祁。
どうして人のためにそんなに喜べるのか、不思議だ。
「………貴方は、蒼真のこと好きなの?」
「………は?」
「?」
パチパチと瞬きを繰り返した那祁は、プッと笑いだす。
「ちょっと、変なニュアンスに聞こえちゃうね」
確かに、人としては蒼真を好きだよ。と那祁は笑いながら答える。