ジキルハイド症候群
「――――そうだ、恵里ちゃん」
飲み物片手に戻ってきた那祁は、良い忘れてたとニコッと笑う。
「俺と蒼真ね………海江田茉里、だいっきらいなんだ」
「え……?」
「それだけは覚えていてね」
一瞬、那祁の表情が変わった。
見たことのない無表情だった。
那祁でもそんな表情をするのか、とボンヤリ思ったけれど、それよりも那祁の言葉に驚いた。
『海江田茉里、だいっきらい』
(初めて聞いた)
妹を、茉里を嫌う人間にあたしはこの世で初めて出会ったように思う。
本当に、この人達は違うかもと思うようになった。