ジキルハイド症候群
階段を昇って行くと、ロープの引かれた場所が目に入った。
立ち入り禁止、と紙が貼り付けてある。
(確か、この先は………)
屋上だったはず。
普段誰も近づかない屋上。
ここなら静かに過ごせるかも、とそちらに足を向けたあたしは、聞いたことのある声に呼び止められる。
「海江田恵里」
「………マリモ、」
「あ?」
ギロリと睨まれた。
マリモはあたしの前まで来ると不信感を露にしながらあたしを見下ろす。
「なんでここにいる?」
「関係ないでしょ?」
「関係なくない」
お前は蒼真の女だ。とマリモは言う。
マリモも蒼真好きなんだ、と思った。
「なんでここにいる?」
もう一度同じ事を聞かれ、あたしはため息混じりに屋上の方に目を向けた。