ジキルハイド症候群
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朝、目覚めは最低だった。
当て付けか何かはわからないけど、茉里が叩き起こしてくれたのだから。
「恵里、おはよう」
「おはよう、お母さん」
綺麗な笑顔を向けるお母さん。
「珍しいわね。寝坊なんて」
「うん……」
椅子に座りながら、小さく返事を返す。
「ママっお弁当!」
「はい。茉里、行ってらっしゃい」
「行ってきまーす!」
元気よく出ていった茉里にお母さんは微笑む。
お母さんは知らない。
茉里の本性を。
家族にも茉里は偽っている。
「恵里、どうしたの?」
「……何でもないよ」
あたしは、首を振って珈琲を飲む。
お母さんは、あたしの隣に座り、顔を覗き込んできた。