ジキルハイド症候群
「具合悪いの?」
心配そうに眉を下げるお母さん。
あたしは、首を振る。
「元気よ」
「そう?……なら、いいけど。」
朝食を食べるあたしの頭を優しく撫でてくれる。
あたしは、その優しさに安心する。
皆があたしを見てくれなくてもお母さんはあたしを見てくれている。
お父さんが死んでから、女で一つであたし達を育ててくれて、愛情を注いでくれている。
そんなお母さんが大好きだった。
「お母さん、今日は仕事で遅くなるけど……」
「大丈夫よ」
「……何だか、心配だわ…」
頬に手を当てるお母さんに、あたしは安心してもらうように笑顔を浮かべる。
「大丈夫よ」
ごちそうさま、と手を合わせて鞄を手にお弁当を入れて、玄関へ向かう。
うーん、と唸っているお母さんに、声をかけた。
「行ってきます」
「あ、行ってらっしゃい!」
手を振って見送られたので、手を振り返してからあたしは家を出た。