桜の葉
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通夜。



アタシは、泣かなかった。
泣けなかった訳じゃない。

涙のタンクは満タンで。
スイッチ一つで溢れ出そう。




……泣かない。
泣いちゃダメだ。


一番辛いのは、葉とおじさん。



どこを見ても黒い服。
それが、涙で歪んで見える。


……泣かないよ。アタシ。













光が、煙になって空に消えて行く。



「……挨拶くらい、して行きなさいよ。」




アタシは、空に向かって呟いた。

‘葉をお願い’



不意に、光の言葉を思い出す。
悲しさで、心臓がチクチクしてたアタシには……何だか、救いの言葉に思った。


アタシには…やるコトがあるんじゃん?



葉の為とかじゃない。
ただ、アタシは……

何でも良いから、光と繋がって居たかった。



…………。



アタシは、アタシの腕をしっかり掴んでる葉を見た。



「……葉。」

「………兄ちゃん………空に行っちゃったね。」



アタシより二歳年下な葉は、真っ赤な目で、笑った。



「オレ……一人ぼっちだ……」

「葉。アタシが、あんたのねぇちゃんになってあげる。」




え?


と、葉はアタシを見上げる。
それから、笑った。

光に似た、笑顔で。



「朔良がねぇちゃん?げげげっ。」

「何よ?何か不満?」

「……不満はないけどさぁ?」
「じゃあ、お姉様って呼「ばないからねっ!!」



アタシと葉は、クスクス笑い出した。
………泣きながら。




もう泣かないからさ。
今日だけ、泣かせてよね。


葉を、ちゃんと守れるようになるから
仕方ないから、アタシが光の代わりになってあげる。



アタシは。
葉の身体を抱きしめながら、光と、約束したんだ。



-----約束---- 終


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