桜の葉
「にゃッにゃにもないよ?!」


アタシは思わず舌を噛んでしまった。
言える訳ないよ。
葉に襲われました。なんて。



「嘘だね。朔良が紅くなったの、初めて見たぜ?」

「あんたが見てないだけよ。」



アタシは、倉石の手を払った。

……んだけど、倉石はアタシの手を掴んだまま。


「倉石、手、離して。痛い。」



一気に冷めたアタシの顔に、倉石は大袈裟に溜息をついて…アタシにキュッと抱き着いた。



「…朔良ぁ……。少しは、俺を見てね?」

若干涙目の倉石。


「見てるよ?」
「いや、そうじゃなくて。朔良の前に、俺居るんだけど?」

「?意味解らない。居るコトくらい解ってるよ?」



倉石まで、葉と同じコト言う。
ちゃんと見えてるけどな…?





「って……いつまで抱き着いてるの。」

アタシが言うと、近くで見てた美都が笑い出した。




「ギャハハハハッッッ!!!朔良ッッッあんた鈍過ぎッ!!」

「鈍くないよ。」

「鈍いって。」



美都は、ひとしきり笑うと、アタシから倉石を引き離した。


「はいはい。悪いけど、朔良は私のモノ。」




「ッッッゆ、ユリッッッ!?」


倉石がザッと退く。

アタシと美都は、顔を見合わせて…ニヤッと笑った。



「「そうかも」」

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