桜の葉
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…………光。
ねぇ、早く目を覚ましなよ?



隔たりの向こう側。
光はまだ目を開けない。



……あんたの可愛がってる、弟が泣いているよ。



アタシは、葉の手をしっかり握ったまま……頭を撫でてやる余裕もない。



「兄ちゃん……。」

グズグズっと、葉が情けないくらい鼻を啜りながら泣いている。

アタシは。
葉と視線を合わせる為にしゃがみ込んだ。



「朔良ぁ…?」

「葉。光、まだ死んでないよ?いつまで泣いてんの。」

「だっ…だって……。」

「目を覚ました時、葉が泣いてたら、光、心配するよ?」



葉は、アタシを見上げて。
頷いた。



「オレ、泣かない。」

「よっしゃ。さすが葉っ!」



アタシは笑った。
不安で不安で仕方なかった。

つっ突かれたら、すぐに顔がクシャクシャになって泣き出しそう。

でも、泣かない。
泣くもんか。



光は死なない。
おばさんみたく、連れて行かないで。


カミサマ……。



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