桜の葉
視点の定まらない目で、光は部屋の中を見回した。



「光っ」
「光兄ちゃんっ!!」



おじさんと、葉が叫ぶと、光は微かに笑った。




ああ……
カミサマ………


ありがとう…。
光の、目を覚まさせてくれて、




本当にありがとう。




アタシは、こぼれ落ちそうな涙を堪えて、静かに光に近づく。

光は、アタシにも笑顔をプレゼントしてくれた。




「朔良……。」



掠れた声。
光の声が、また聞けた……。

大好きな、少し低い声。



でも。
光は目を覚ましたのに、今にも目を閉じそうだった。



「光?」


何だか、嫌な予感が、またしてもアタシの首筋をゾワゾワさせる。

光の、唇が動いた。
あまりにも掠れてて、聞き取れない。

アタシは、光の口許に耳を寄せる。




「何?光。」



「悪い……さ……葉、よろしくな?」

「え?」

「泣く……から……。」

「何言ってんの?」

「朔良……」




アタシの名前を呼んだ光は、目を閉じた。




同時に聞こえたのは、




ピー------ッッッ




という、不快な音だった。





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