マジメな夜
確かに啓太の迷っている2つの道のどちらにも幸せあるだろう。その点では敦志の言葉は間違っていない。しかし答えでもない。
「わかってるよ。それはわかってる。」
啓太が小さな声でぽつりと言った。そうだ、そんなことは啓太はわかっている。
そもそもこの話に答えなんてない。啓太がその2つの幸せを比べてしまっていることが問題なのだ。正確に言えば、幸せと幸せを比べているわけではないだろう。たぶん啓太は、幸せと不幸を比べてしまっている。啓太だけではない、人は必ずそうしてしまう。比べることなどできないのに。不幸と比べられた幸せはもう幸せではない、妥協という言葉に変わる。これも幸福過多の日本人の考えだと言われてしまえばそうなのかもしれないが。
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