君のいる場所
そして初登校日と転校初日。
もう、自己紹介とか緊張してやだ。ヤダと言ってやめられたらどれ程嬉しいか。

長い廊下を俯きながら歩いていた。先頭に歩く担任教諭である、櫻井先生の背についていく。
先程から緊張を解こうと話しかけてくれるのは、ありがたいけれど…返って緊張するのでやめてください。お願いします。

でも、もっと嫌なのが自己紹介よりも友だち出来るかの方が心配だよ。

昔から内気で暗くて緊張すると上がってしまって何も言えなくなってしまうこの私が…小学校からの持ち上がりの仲の良い人達同士の塊の中へ入れるかと問われると、間違いなく答えはノォーです。無理です。

自信なんてないよ……。
人の心など知らない教室と廊下は、今すぐにでも死にたい私を容赦なく手錠で捕まえる。



「ここが教室だから、あんまり緊張せずに。俺が呼んだら来てくれ、な?」
「はっ、ハイ……」



今すぐ死にたいです。

先生が先に教室へ入ると賑わっていた教室から、生徒の笑い声が消える。
ああ、等々儀式が始まってしまった!どどど、どうしよう。とりあえず…ここの窓から飛び降りようかな。
向かい側にある大きな窓に視線を走らせ、暫く見つめたのち溜息を零した。

逃げちゃダメだ。うん。一応ここまで来れたんだし、自己紹介したらもっと凄いよ、私!

自分を励ましていると、先生が「結城」と合図を送ってきたので、私は右手と右足を同時に出しながら目の前にある扉を開けようとしたら……勢いよく開けすぎて、ドアが外れて内側へと倒れてしまった。



< 3 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop