君のいる場所
アイスガール SARAside

転校初日から翌日。教科書は売店で揃えられたので授業の支障はないのが唯一の救いだった。

だけど……いまだに友だちゼロ人なのは、変わりません。事実です夢じゃないです。

机に座って一人きり。何かやることもなくただぼぉっとしていた。
昨日は、夢じゃなかった。桜の王子様だった神谷陸くんは、まさに中身まで王子様だと思う。
二、三言しか喋ってないんだけど…それでも、物腰が柔らかいというか、とっても親切な人で……胸が温かくなった。

そう、春の息吹みたいな気持。これってなんだろう?

首を傾げながら休み時間を過ごす。その時担任の櫻井先生が教室に顔を出す。すると女子生徒が一目散に駆けより集まる。だけど、先生はそれを日誌でポンポン叩きながら、「神谷」と名前を呼ぶ。



「はい?何ですか櫻井先生」



友人と話していた神谷くんが顔だけを先生へ向ける。



「お前学級委員だったよな?早速仕事頼んでいいか?」
「何ですか?」
「転校生の校内案内を頼みたいんだよ」
「校内案内?結城の?別に構いませんけど…それよりドア壊さないでくださいよね」
「俺の所為じゃない。ってかまだ壊してない。いいからお前ら席についておけ!俺は職員室に行かなきゃいけないんだよ!」



櫻井先生は必死にしがみつかれる中、悪戦苦闘しながら教室を去っていく。
それまでの一部始終を教室内のクラスメイトが全員聞いていたという事実に、当の本人である私は。
一気に心拍数を上げた。

え、ええぇぇぇ!まさかの王子様と二人で校内デート?!
い、いや。デートじゃないよ、うん。仕事だよ、案内だよ。深呼吸をしよう。

深く息を吸いこんでいると目の前に神谷くんの顔があった。

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