青い瞳のガレア
 理解できないわけではない。

 アグリスは極めて冷静に情勢を見ている。

 人界に住む魔族は、人間に肩入れしてはならない。

 平時であっても、魔族は中立な立場を守るものなのだ。

 まして、ガレアは伝令の役目を担っている。

 人間に加担することは許されない。

「でも、それは魔族も同じではありませんか。壊滅的なまでに減衰しながら、現在はむしろ大きく数を増やしています」

 詭弁であることは百も承知だ。

「勢力の拡大を指摘するなら、人間も魔族も大差ないでしょう」

 言葉だけ聞けば、ガレアの主張も間違ってはいない。

 だが、争乱の後に著しく数が増えたというなら、人間のそれは魔族を上回る。

 長いもので1000年以上生きる魔族に対して、人間の寿命は80年前後。

 命の短さ故に、人間はその数を飛躍的に増やしたのだ。

 その進度があまりにも急速であり、魔族のそれを圧倒したことが崩落の危機を招いているのだとしたら、人間を脅威と見るアグリスの考え方こそ正論といえる。

 短命ゆえにその数を爆発的に増やした人間の繁栄ぶりは、魔族にとって脅威という他ない。
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