青い瞳のガレア
 凛として悠々たる仮面から解放された、それはガレアの心からの叫びであった。

「わ、たし…は、訃を、告げる、烏…なんだ…から、悲嘆、に、暮れて…ばかり、いられないよ」

 息を詰まらせつつ、ガレアは言葉を絞り出す。

 しかしその目は、澄んだ滴で潤んでいた。

 シャーラステアは知っている。ガレアは決して冷徹な賢者ではない。激情を露にしている今の姿こそが、本当のガレアなのだ。

 不意に、ガレアの声が止む。

「空が…怯えている…」

「空が?」

 シャーラステアは言葉の真意を計りかねる。

「瘴気の波動…いつも感じているのとは較べものにならない、禍禍しい悪意に満ちた力…」

 顔を上げたガレアは、いつもの沈着さを取り戻していた。

 窓際に歩み寄り、ガレアは月を見上げる。

「やはり…月の異変は気のせいじゃなかった」
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