ヴァージンチェリー
「で、殴られた」
「は?」

「痛いからヤダって、グーで。初めてだったみたいで」

「……それ、その口のってその時の?」


私は、蜜柑を食べて、顔を顰めたさっきのタクを思い出して口元を指差した。

苦い顔でタクが頷く。


「そう。気持ち悪いから帰ってって追い出されてよ……結局、急に男みたいになられたら嫌になるよって振られたワケ。っていうか、俺、最初から男だし」


タクは愚痴っぽく言うと、両目を閉じた。
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