ヴァージンチェリー

3

「意外と安いんだなぁ」


ビジネスホテル一泊3700円也。
最終の新幹線に乗り遅れた私たちは、そこで一泊することにした。

どのみち、雨でびしょびしょのまま――着替えの服もないのに――長時間新幹線なんかに乗れない。

家に連絡しなくても特に問題はない。

お姉ちゃんが友達とふらりと旅に出て、一ヶ月ほど帰らなくても気づかなかった両親だ。

タクの方だって似たようなものらしい。

だから、今の状態で強いて問題を挙げるとすれば――

私たちが男女ってことでしょうか?

私はベッドの淵に腰掛けて誰でもない誰かに問いかける。

答えの代わりに、先ほど私が使っていたシャワーの音が聞こえる。

今はタクの番。
レディーファーストなんて馬鹿馬鹿しいこと言って彼は先に暖をとらせてくれた。
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