ヴァージンチェリー
「帰りの新幹線代、私が出すから」


おかずとご飯が容器と蓋の中に均等にわけられていくのを見ながらタクに声をかけると

「付き合わせたのこっちなのに、情けねーな」

と彼は本当に情けない顔をした。


「別に……私の方がお金持ちだし、多分」


お金持ちが一つのお弁当を半分こで夕食中。


「軽くお嬢だもんな」
「まあね」


タクが笑って容器の方を差し出す。
私は立ち上がってそれを受け取ると、タクが座るソファの対面のソファに腰を下ろした。

よほどお腹が空いているのかタクは「いただきます」と言うなり勢いよく箸を動かし始める。

だから、私もそれ以上は言わないで目の前のお弁当に集中することにした。

おにぎりの塩加減はなかなかで、唐揚はちょっとからかった。
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