この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
祐くんを見下げられるこの逆転現象な位置だって、全く嬉しくない…。
「自分で下りればイイじゃん」
いやいや、待て――ソレを張本人が言うとはなんとも酷い。
あっけらかんと言い切る身勝手な男を、この時点で初めて睨みつけた私。
この状況下で、固いコンクリートへ危険なダイブにトライするアホがいるか…!
「ゆーくんのバカ!」
「…へぇ。バカって言う方が馬鹿って言っただろ?」
「っ、分かってるわよ!」
恨みをたっぷり込めて言えば、目と鼻の先にある真っ黒な瞳が不機嫌に光った。
「のんは何も分かってない」
だけど眼差しとは裏腹に、ニッコリ笑って言い切る祐くんこそ何が言いたいのよ…。