この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
グルグル取り巻く悔しさから唇をキュッと噛んで、視線を逸らすしか出来ない私。
“すべて分かる”と言いたげな顔つきが、どれほど傷つけているか知らないクセに。
大切な相手がいる男は一度でも抱いた女に、これ以上の勘違いをさせないでよ…。
「ハイハイ、細かいコトは気にしない」
「ゆ…、ゆーくん!」
この状況を細かいと言ってのける祐くんは、本気でどういう神経をしているの?
「なに?」
「っ・・・」
尋ねようとした言葉を呑んで、合わせてしまった視線に後悔するしかない。
ジタバタ暴れようとすれば、いつもの笑みを見せられて何も言えなくなる。
アノ日を彷彿とさせるムスクの香りが、本気でキライになれたら良いのに。
何コレ…、今日は最後の最後までドンマイ私ですか――