この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
すると彼はひとつ微笑んだあと、行く手を阻むように立つ人へ視線を変えた。
ズルイ、ズルイよ…。何にも言えなくなるじゃん――
「ほら尭、早く帰れ」
「はぁ?」
「だからぁ――帰って?」
いかにも“忘れてた”ような態度で、尭くんへ帰るよう促す自由人な祐くん。
だけど無言の私といえば、二度目のキスのお陰で助けを求められず仕舞い。
色々と気まずさ一杯で、ずっと尭くんからの視線を避けていたのは事実だ。