この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
ひとり傷つくわたしをよそに、2人は対峙の姿勢を崩さないからもうヤダ。
考えても答えが出ないから、何もかもイヤになる――…
「イチイチ周りクドイ」
「ハハ…なら――いい加減、のんを返して貰うわ」
祐くんが放った一言が、投げやりになりかけた私の意識を取り戻す。
私を尭くんから返して貰う…?冗談にも程がありすぎる。
不埒な男とか風船男とか、レッテルを貼られている立場じゃないクセに。
勝手だよ、本心も何にも見せないで…――
「わ、私は、誰のモノでも無いもん…!」
「のん、どーした?」
「下ろして…!」
ジワリジワリと、ひとつずつ心を暗くする発言にはもう嫌気がさした。
そうだよ。私は私のモノであって、誰かの専有物なんかじゃない。
まして婚約者のいる男が、軽々しく言うセリフに勝手に絶望したくなる。
どこまで身勝手発言で苦しめれば、アナタは気が済むの…?