この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
小さなプライドを見せて、泣かないようにギュッと唇を噛んで祐くんを睨んだ。
こんなドロドロした感情――幾度も修羅場って来たから慣れっこだし。
もう幼馴染みには戻れないからこそ、今日限りで会いたくないよ…。
「という訳で、尭バイバイ」
「ちょっと、下ろしてよ…!」
その発言をスルーしやがった男は、最後の関門であった筈の尭くんの脇を通り抜ける。
私たちを避けるように視線を逸らす彼に、なぜかズキンと心に小さな痛みを覚えた。