この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
こうも明瞭に語尾が弱くなれば、嘘がウソだとすぐにバレてしまうのに。
「ソレはのんの本心じゃない」
どうして祐くんにはいつだって、なけなしの強がりすらバレるの…?
「ち、違う…!」
ウソ――ジワリと目を潤ませる潤滑液も、あとすぐで大粒のモノが零れ落ちそうだ。
「よく言う。泣く寸前のクセに」
必死の努力ですら、まったく効き目が無かったと言いたげに。
オートロックの前で立ち止まった祐くんが、ジッと私の顔を覗き込んで笑うから。
「…っ、ヒドイよ」
薄暗い中で見据えられて居心地の悪さを感じ、フイッとその視線を遮ってしまう。
「ハイハイ。いいから解除して?」
その言葉で暗証ナンバーを押した私を、ククッと一笑にふすのは気に入らないけど。
この香りに甘えるのは今日限り――と、突き進む彼に身を委ねていた…。