この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-


無言のままエレベーターを降りて、7階にある部屋の前に着いた時。


ようやく地に足をつける事が出来た私は、いささかホッとして自室のドアを開けた。



今ごろ考えてみれば、誰にも会わずに済んで良かったな…――



「ど…、どうぞ」


今さら追い返せないし…、かといって祐くんを招き入れたい心情でもないけど。


このまま彼が引き返す訳がないから、目を合わせずに中へ促す可愛げの無さだ。



「ん、お邪魔します…って言いたいトコだけど。
あのままだとマズいし、車を移動してくるから」


「…あ、それなら」


“どうぞそのままお帰り下さい”と、サッと潔くお引き取り願おうとすれば。


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