この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
2つのカップへ熱々の紅茶を注ぎ終えてから、ティーサーバーを置いた瞬間。
力強い腕が待ち侘びたように伸び、ギュッと背後から引き寄せられた。
「ちょ・・・っ」
「のん…、一体どーいうつもり?」
やたらと耳元で問い掛けられると、その低くてセクシーな声が鼓動を早くする。
「な、そ、そっちが…は、離して!」
「質問に答えないとヤダ」
明らかに震えた声でどうにか返せば、案の定バッサリ断ち切るヒドイ男。
「っ…、ゆ、ゆーくんが悪い…のに…!」
また優しく包み込む温かさと、忘れられるワケないムスクの香りに抗えなくて。
「何で俺が悪いの?」
さっきとは打って変わって、いつもと同じ慰めるような声色に変わるから。
「――だって…!」
「うん?」
ズルいよ…、祐くんはいつだって私にウソをつけなくさせる――