この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-


これ以上何も言ってはダメと、最後のわずかな自制心を働かせていたのに。


ダメなのは私の方…、いつまでも子供だ――



「ゆー、くんは…ら、蘭さんが、いるクセに…っ」


ああ言わなければ良かった…と、今さら自らを責め立ててみるけど。


なけなしのプライドも捨て去った今、涙のしずくとともにゆっくり思いが溢れ出す。


一瞬の静まりをみせたキッチンは、まさに家主がこの場から逃げ去りたい状況だ…。




「いや…、何で蘭ちゃんが?」


「・・・は?」


すると意味が分からないといった物言いで、焦燥に浸る時間がプッツンされる。


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