この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
抱き締めるだけだった腕は次第に、その片方の手先がなぞるように動き始めた。
「やっ、めて…」
どんどん奪われていく理性をかき集め、自由な指先で祐くんの手の甲をつねれば。
「悪いけど痛くない」
さすがに場数を踏んで来た男だけあって、身勝手なトコロは憎らしい。
「っ、や…ぁ、」
婚約者の件は私の勘違いだったとはいえ、すぐソッチへ事を進めるのは嫌だ。
「紅茶で一息つくより、コッチのが良いクセに」
チガウ、チガウ、チガウ…、私は祐くんの…――
「っ、ひど…い、よ」
被せられた一言は私の意思をスルーしていて、悔しいけど涙を連れて来てしまう。