この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
――――――――――…
「――で、またヤったのか」
「…ちょ、そんなハッキリ」
今日もまた、目の前のコーヒーより煙草に夢中な女の第一声は凄い。
この唐突さに慣れていようが、飲んでいたチャイを吹き出しそうになる。
「別に恥ずかしくナイわ。で、ヤッたでしょ?」
いやいや待って下さい。同席するコッチが恥ずかしいんだ。
「――で?」
「…用事が出来て帰りました」
周りの視線を気にしつつ、なおも急かす彼女へボソッと吐き出すとは情けないが。
「・・・はぁ?
なにアイツ、とうとう使いモノにならなくなったの?」
「ち、ちがうよ…!
連絡があって…出張が入ったらしくて帰ったの」
そうです、そうなのですよ。
流れで寝室へなだれこんだ時、胸ポケットで祐くんの携帯電話が振動して。
キリっと表情の変わった祐くんが、本場仕込みの流暢な英語で電話に出たのだけど。