この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-


サッと通話を終えれば緩めていたネクタイを締め、フゥ…とひとつ溜め息を吐いた彼。


既にベッドに移動して乱れかけの洋服に手を掛け、優しく整えてくれると。



“のん…、ごめん。
これから出張する事になったから、今度のんで満たして?”


そう身勝手なセリフと胸の高ぶりは置き去りに、マンションを出て行ったのだ…。



「――だから…祐くんは…」


「へぇ、のんにフォローされて風船男も形ナシね。
処理も出来ないままとなると、どーしたのかしら…」


「っ、柚ちゃん…!」

顔に似合わないアナタの大胆発言で、毎回聞き耳を立てられる身にもなって欲しい。



「美味しそうなのんを前に“お預け”喰らって、アイツも相当堪えた筈ね」


「おいしくないってば!」


フフッと実に愉快そうに一笑すると、どこまでも祐くんに冷たい姉は恐ろしい。


< 127 / 178 >

この作品をシェア

pagetop