この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
気にしないって言っても、私にはどうやれば良いかが分からないもん…。
「敵を作らない事は大事だけれど、だからと言ってすべてに良い顔をするのは違う。
こう見えても私なりに、“譲れない一線”を持っているからビクビクする暇がないの。
のんの気持ちがブレなければ、小さな問題なんてすぐに収まるわよ」
“だから私は、恋愛くらい自由でいたいのよ”
そう言い切った彼女は仕事を語りつつも、私が抱える“本題”について諭してくれたのだろう…。
「朝比奈、銀座店のヘルプ行って来て」
休日明けのオフィスへ向かうと、やって来た尭くんから用件を突きつけられる。
「あ、あの、中嶋チーフ…」
「いま時間無い。悪いが後にして欲しい――」
「…はい。…すみません」
話しかければ冷たく視線を逸らされて、ツキンと心が痛む音がした…。