この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-


何だかクヨクヨ悩む方がバカらしく思えるのも、また似ているゆえんかもしれない。



「だから、そんな顔してないで頑張んの!
そんな顔してると幸せが逃げてくわよ?」


「…はい!じゃあ行って来ます」


「よし、行って来なさい」


うん、と頷いて笑顔をつくれば、綺麗な顔で笑った泉さんが頭を撫でてくれた。


彼女とは何歳も違わないのに、底抜けに明るい性格とパワーは私の憧れだ。


この環境の中で気にかけてくれる人がいる事が、どれほど救われただろう…。



白い目を向けて来る集団の横を通り過ぎる時、頭を下げて急ぎめにオフィスを出た私。


ドアを閉める時に、さり気なくチーフ席に座る尭くんに視線を送ってみたものの。


ちょうど電話をしていて目も合う事がなく、静かにドアを閉めるだけに終わった。


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