この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
――なんて。宿敵ともいえる彼の事を気にする方がオカシイわ。
あれから周りと一緒に態度をひるがえして、明らかに無視する尭くんこそ酷い。
仕事の件で話し掛けようが、眼鏡の奥の目も合わずに事務的会話で終わってしまう。
いや…事務的どころか、部下としての扱いともいえないほど冷たすぎる。
いつもなら“アホ”と呆れるミスにも、何のアクションも示さなくなった彼。
注意や叱咤も無しにスルーされる方が虚しいし、まるで眼中に無いようにも感じて。
あの夜の出来事は、俺には“どうでも良い”と言っているみたい――…
「・・・」
あれ?あれれ…ちょっとストップしようか、今の思考回路。