この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-


サーッと血の気が引きながらも、一礼してからダッシュで裏へと舞い戻ると。



「…ほんっとーに、申し訳ありません!」

それを蘭さんの前へと丁重に、頭を低く下げて差し出した。



祐くんに渡して貰おうと思って、ずっと丁寧に包装をして用意していたのに。


失礼な事に最近のドタバタ具合で、大事な存在をすっかり忘れていた私。


オマケに不要な場面でアホ晒しも良いところだ。さらには何ですか、今のテンパり具合。



ていうか祐くん。お願いだから、この場で噴き出し笑いは止めようか?



「いいえ、私が悪いんですから。
えと…、実はですね?すっかり忘れていて旅行中に思い出したんです。
先日帰国していたのに時間の都合上、伺うのが遅くなって本当にゴメンなさい。

ですから望未さん…、どうかお気になさらないで下さいね?」


「あ、ありがとうございます…」


可愛らしいソプラノの声で紡ぐ言葉が、不思議と心を落ち着かせてくれた。


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