この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
悲しいと思っているのは、勝手すぎだと分かっていても。やっぱり…――
「でしょ?蘭ちゃんには俺もドキっとするし」
「…だろうね」
彼女のふとした笑顔とか様子に、ドキッとするのは当然なのに。
なぜかソレを祐くんから聞くと、ムッとしてしまうとは。
あり得ない、心の天使であるカワイイ蘭さんに失礼だよ。
そのうえ思考回路にしても、アチコチへ頓挫しすぎだ。
それを隠すようにビールを煽れば、向かいの席でクスクスと笑っている彼。
「――妬いた?」
「…知らないっ」
アッサリ見抜かれていた事が悔しくて、それ以上に何だか気恥かしくて。
プイとそっぽを向けば、さらにハハハと笑う祐くんに腹を立てる暇もない。