この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-


ほど良くアルコールが入れば素直になると、すっかり熟知しているからで。


これまでの経験は通用させず、ほろ酔い女の扱いもお手の物か。


今まで感じた事の無い、異様なドキドキ感に包まれて拾ったタクシーへ乗り込んだ。



頭を肩付近へと引き寄せられ、ふわりと漂うムスクの香りが祐くんだと教えてくれるのに…。


この優しい香りに、昔からどれだけ癒されて来たのだろう。


桜井兄弟の中でも特に優しい祐くんは、お兄さん的存在でいて私の憧れだった。


いつも失恋する度に慰めてくれて、その度に甘えては泣いてすがっていたね?



そう。結局はいつも肝心なモノから逃げて、事実に眼を背いていただけだ…――


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