この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
「おい、今ドコだ!?」
「た、タクシー。…で、尭くんのトコ…」
「ったく、順序が逆だろバカ!
――下で待ってるから、さっさと来い。アホ」
「うっ、ぅ…ん」
こんな時まで順序の叱咤をするのだから、やはり鬼軍曹である所は変わらないけど。
いつもメガネの奥の眼差しが光っていたのは、ソレだけ私を見てくれてた証拠。
遅いと思う。でも、貴方の口で“嫌い”のフレーズを言わないで――…
10分ほどして到着したマンションの庭先で、たたずむ男性を視界が捉えた。
車のヘッドライトの眩しさで、いっそう目を細めるのは間違いなく尭くんだ。