この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
ムーっと来るよりも早く眼鏡の奥の瞳に見据えられて、もはや動けない私。
「だから…オマエが幸せになりたいなら、誰がどう考えても祐史さんがベストと思う。
オマエが気兼ねなく泣けて、ベッタリ甘えられるのはあの人だけだ。違うのか?」
「そっ、そうだけど。でも…!」
尭くんの言うとおり、祐くんは私の大事なオアシスだし。昔から大好きな人には変わりない。
「でも、何?」
言葉に詰まった私を見下げて、容赦なく急かす彼にたじろぎたくなるけど。
「わ、私…祐くんは大好きだけど…、やっぱり違うの。
いつも甘やかしてくれるし…、辛い時は泣かせてもくれて。嫌な事があれば、“のんが可哀想だ”って慰めてもくれる…。
だけど、やっぱり駄目なの」
祐くんの優しさと笑顔にすこぶる弱いし。
ずっとずっと甘えて、いつも泣く場所は祐くんのトコロだった。