この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-

ああ何だか少し分かってきた。私が今までの恋愛で持っていた、女としての小さなプライドなんて。


本当に大切な人の前では、アッサリ消えて無くなってしまうんだね。



「好きな、の…。あ、き…くんがぁ」


ほら口にすればするほど、自分の気持ちが何処へ向いているのか分かるから。


みっともないだとか、そんな事を考える前に。自分の胸にある想いを伝えたくて仕方ない。


遅すぎるって、分かってるけど。尭くんお願いだから、キモチは嘘じゃ無いよ…？



もう迷いようの無い、確かな気持ちだもん…――



すると泣きすぎて残念な有り様の私の肩を持ち、そっと引き離した尭くん。



「…ふぅん。そんなに俺が好き？」


「ひっ…、くっ、…ん」


コッチは必死なのに。いつも通りに淡々とした彼の声に、若干の悔しさを覚えて何度も頷く。