この涙を拭うのは、貴方でイイ。-大人の恋の罠-
分かってるよ、私はどうせ柚ちゃんと違ってバカだ。
オマケに祐くんが留学してMBAを取得してるのは、重々承知してるし?
超がつくほど一流企業の役員さんとも、知ったうえで発言してるのに…!
…などと考える時点で、ますますバカを浮き彫りにしているのだろう。
「さてと・・・」
そんなプチパニック状態の私を、いともアッサリ組み敷いた祐くんは。
露わになっているであろう私を見下ろし、至極ご満悦の表情だけど。
「ふっ、ふざけないでよ…!」
さっきまで触れていたらしい厚い胸板が、ヤケに恥ずかしさを込み上げる。
いや…、この歳で見慣れてない訳が無いけども。
「ふざけるほど暇は無い」
「ぜ、ぜんぜん意味分かんない…!
なによ、付き合うとか…!」
そう祐くんは、昨日の夜まではお兄ちゃん的存在だったのだから。
「身体任せにイイんじゃね?」
「・・・ッ」
顔の両脇に手をつかれ、ヘタに動けば彼に触れる厄介な現状に困り果てるだけ。
どうして私は清々しい朝から、これほど疲弊してるのよ…?